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ROUND3 直木賞選考会
山本兼一『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』
| 山本兼一『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』 |
当落予想 ◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴 |
作品評価 A〜D |
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|---|---|---|---|---|
| 大森 | 豊崎 | 大森 | 豊崎 | |
| … | ◎ | B- | B | |
大森松本清張賞受賞作家ですね。受賞作の『火星の城』が132回直木賞候補になったのに続いて、これが2回目の候補。
豊崎これもいいお話だとは思うんですけど、ただ自信がないのは、私には時代小説というジャンルの中でこれがどれほどの作品なのかってことの判断がつかないんですよ。時代小説はプライベートでは全く読まないので。
大森時代小説っていっても、ほとんどファンタジーですからね。タイトルの“とびきり屋”というのは、幕末の京都に店を構える古道具屋の名前。大店の二番番頭が店のお嬢さんと惚れ合ってしまい、手に手をとって家出して、新しく店をつくったと。そこまではいいんですが、坂本龍馬が下宿してたり、新撰組の連中が常連だったりの幕末オールスターキャスト。「井戸の茶碗」とか、落語の古道具ネタもがんがん投入するうえに、若おかみが毎回、骨董見立て勝負で知恵を絞るみたいな趣向もあって、リアルな時代小説はぜんぜん目指してない。最近で言うと、第137回候補の畠中恵『まんまこと』に近いですね。
豊崎ふ〜ん。で、とれるの? とれないの?
大森それ以前に、土佐人としてひとこと言わせてもらうとですね(笑)、この小説は坂本龍馬の土佐弁が断固許せない。
豊崎ふつうの言葉に、みんなが知ってる土佐弁っぽい語尾をつけてるだけなんだよね。
大森しかも間違ってるし。現在進行形と現在完了形の語尾の使い分けは土佐弁の基本です。
豊崎平岩さんあたりが、時代考証を持ち出して反対するかもしれませんしね。
大森幕末の有名人をどさどさ出演させたのが裏目に出るかも。
豊崎ねーっ、足ひっぱるならそこだろうなとは思います。でも、ほのぼのいいお話ばっかだから、もしツモ爺(津本陽)が今も選考委員なら推したかも。だって、畠中作品同様、これもドラマにしたらいいんですよ。で、民放よりもNHK向き。
大森「とびきり屋見立帖」ってタイトルでね。
豊崎誰がいいかな、奥さん役。20歳ですよ。
大森やっぱり蒼井優じゃない。「おせん」で着物姿があんなに似合うということがわかったし。
豊崎おおおおーっ、それは見ちゃうかも。蒼井優なら見ちゃうかも。最近は多部未華子もいいよね。ハニカミ王子に似てる、女の子にしちゃ凛々しいあの目がいいんですよお。「鹿男あをによし」では剣道着も似合ってたし、
大森ごっほん!
豊崎…………えっと、話を小説に戻しますと、奥さんは骨董の目利きで、旦那は顔相を見るのが好きって設定になってるじゃないですか。その二重仕立ての趣向は面白いなと思ったんです。最後の方でその旦那の顔見立てが生かされてて、大団円。フツーに巧いでしょ。
大森これはでも、直木賞の水準じゃないでしょう。
豊崎えっ、直木賞の水準て、なんスか!? んなもん、過去にあったんスか。教えてくださいよ、大森先輩!
大森時代小説にはうるさい人がいるんですよ。
豊崎そりゃそうでしょうけども。過去には戦争小説にうるさかった人もおりましたし。
大森戦争小説といえば、文春枠で入るかと思った《別冊文藝春秋》連載の古処誠二『メフェナーボウンのつどう道』は候補から漏れて、この『千両花嫁』が入ったわけですね。そう考えると期待度は高いのかな。
