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ROUND 3芥川賞選考会

井上荒野『ベーコン』

井上荒野『ベーコン』(集英社) 当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
B B+

あらすじはコチラ

豊崎井上荒野の候補はほんとに意外だった。

大森そうそう、なぜ今ごろ唐突に。井上光晴の長女ですが、作家の娘だったら、阿川佐和子(阿川弘之の長女)のほうが先じゃないの?年齢から言っても。

豊崎なんと、娘枠まであるんだ、恐るべし、直木賞(笑)!

大森阿川佐和子は、『ウメ子』で坪田譲治文学賞をとって、 『スープ・オペラ』が山本周五郎賞の候補になったけど。直木賞候補はまだだから。井上荒野は、『潤一』で島清恋愛文学賞受賞、『だりや荘』『誰よりも美しい妻』で2年つづけて吉川英治文学新人賞候補。ちなみに『ベーコン』と『約束の地で』は、「小説すばる」掲載の連作短編集対決ですね。

豊崎しかし、『警官の血』や『悪果』とくらべると、『ベーコン』って、もう、なんていうか、瞬殺って感じで読めちゃいましたね。食べる行為にまつわる九編の短編ががおさめられてて。「ほうとう」「クリスマスのミートパイ」「アイリッシュ・シチュー」……。

大森料理のセレクションもなかなかよく考えられてる。

豊崎おいしそうですしね。わたしが好きなのは「煮こごり」かな。『潤一』とよく似た形式。あれはひとりの男のことを、つきあった女たちが語る構成で。

大森僕は『潤一』よりはこっちのほうがいいと思った。ていうか、『潤一』がなんであんなに評判いいのか理解できなかった。

豊崎わたしは『潤一』のほうが先に延びるっていう可能性があった気がするんですよ。荒々しくて、ある意味毒々しくもあったけど、それがこのひとの持ち味なのかなあと思って。そしたら『ベーコン』では思いっきり丸くなっててびっくりした。うまくなったなーとは思うんです。でも、どの作品にも既視感がまとわりついてきて、こういう作風ならバカウマの角田光代がいるからいいよって言いたくなっちゃう。

大森僕は「ゆで卵のキーマカレー」が好きですね。年を食ったせいか、ラストの〈だめなのよカレーは。しげきぶつだから〉というセリフに込められたベタな感傷に思わず反応してしまう(笑)。こういう演歌な世界に行ったほうがいいんじゃいですか。これが候補になったのは意外だけど、単純に作品の傾向だけを考えると、『ベーコン』がいちばん直木賞向きかも。

豊崎ええぇーっ? わたしは『ベーコン』とったらびっくりするな。あ、あれか、森絵都の『風に舞いあがるビニールシート』がとれる(参照)んなら『ベーコン』もありってことなのか。ビニールシート枠なの? ビニールシート枠で『ベーコン』受賞(笑)!『悪果』とか『警官の血』とか『私の男』とか、まったりぬったりしたものをさんざん読まされたあとに、『ベーコン』読んでほっとして、思わずマル付けちゃう。そういうご老体がおられるかもしれない。ヒロッキー(五木寛之)あたりがうっかり丸つけちゃうことはあるかもしれませんねえ、たしかに。

大森楽しくのんびり読める候補作はほとんどこれだけですから。

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