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ROUND 3芥川賞選考会

黒川博行『悪果』

黒川博行『悪果』(角川書店) 5回目 当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
B+ B+

あらすじはコチラ

豊崎同じ警官ものでも、わたしは『悪果』のほうが好きなんですよ。

大森僕もこっちのほうが面白かった。

豊崎黒川さんの大阪弁はすばらしいです。主人公の大阪今里署のマル暴担当の刑事、堀内と相棒の伊達とのあいだでかわされる会話が楽しい。生ビールと餃子を二人前注文する巨漢の伊達に〈「いったい、何人前食うつもりや、え」「堀やんが来るまでに三人前食うた」「痛風になるぞ」「わしの尿酸値、なんぼか知ってるか」「知らんわい」「九・二や。発作が起こらんのが不思議やと、医者にいわれた」〉こんな調子で。

大森会話もそうだけど、そういうディテールがどんどん暴走していく予想外の面白さが『悪果』の身上。それが『警官の血』と違うところですね。

豊崎なのに、『このミス』でも年末の「週刊文春」企画でもベストテンに入ってない。これは意外でした。

大森『悪果』の前半、〈遠出の盆〉(出張賭場)の手入れに向けて緻密な作戦を立案・実行していくところはめちゃくちゃ読ませる。主人公の堀内は、ブラックな業界紙の記者に捜査情報を流し、強請りの上前をはねて捜査費を稼いでる。見かけも態度もヤクザそのもので、「おまえは極道よりも性根が腐っとる」と言われる男なんだけど、意外にも正義と真実のヒーローなんですね。そのギャップが面白い。後半はがらっと雰囲気が変わって、前半の伏線を生かしながら、ストレートなタイムリミット・サスペンスに雪崩れ込む。ただ、事件の真相というか、堀内が巻き込まれた大きな陰謀の正体みたいなものがちょっとガッカリ。

豊崎そうそう。ラストも陳腐で残念なんですよね。黒川さんは、前に北朝鮮に行く話で候補になってるじゃないですか。

大森『国境』ね。第126回の候補作。

豊崎わたし、好きだったなー。あの時にすんなりあげればよかったのに。

大森『国境』は惜しかったんですよね。このときは山本一力の『あかね空』と唯川恵の『肩ごしの恋人』の二作受賞だったんですが、『国境』もほぼ同点で並んでたのに最後で落ちちゃった。

豊崎なるほどー。今回も『警官の血』と『私の男』のダブル受賞となって、同じことが繰り返されると。ああー……。あ、わたし、わかりましたよ。黒川さんってギャンブルがお好きなんですよね。それをおやめになってはいかがでしょうか。ひごろのギャンブルで小さな運を使い果たして、こういう大きな運を逃しておられるのでは?あと、着てる服が縁起が悪い。なんでしょう、あの得も言われぬセンスは! 関西テイストの派手な編み込みセーターは!

大森まあまあ、あの服は看板ですから。それに、もしかしたら前回の『国境』が次点だったことを思い出して、黒川さんを推す選考委員もいるかもしれないよ。ただ、作家歴ではさらに先輩の佐々木譲が来ちゃったからねえ。しかも同じ警察もので、『警官の血』とどっちが直木賞的かと言えば……。

豊崎うーん。第126回の悪夢ふたたび、ですか。

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