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ROUND 2芥川賞選考会

川上未映子『乳と卵』

川上未映子『乳と卵』(「文學界」2007.12) 2回目 当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
A- A

あらすじはコチラ

豊崎さあ、大本命川上さんです。「乳と卵」。「ちちとらん」と読むんですね。

大森「ちちとらん」てくらいだから、とらないんじゃないか(笑)

豊崎冒頭から笑ったなー。久しぶりにあった、豊胸手術のために上京してきた姉親子を見て、〈わたしを一瞬黙らせたのは久々に見た緑子の諸々ではなくてむしろ巻子の諸々、その全体としての縮み具合であった〉だって。川上さんて、ほんとにセンスがいいですよね、笑いの。

大森容赦がないしね。

豊崎この人お得意の、○○部って言葉もかなり好き。〈その隣にフグを食べさせる店があったりして、がらにしても謎であり、いったいこれのどこがフグ部〉とか。

大森前回(参照)、絶対ムリだと思った「わたくし率イン歯ー、または世界」が、蓋を開けてみると意外にも最後まで競って、事実上の次点だったわけじゃないですか、それに比べれば、「乳と卵」は芥川賞向きにチューンされているし、女性性をテーマにするのはありきたりといえばいえるけど、モチーフに豊胸手術を持ってくるセンスはさすがですね。

豊崎豊胸から排卵へつなげるドラマツルギーも素晴らしい。クライマックスで巻子と緑子が自分で自分の頭に卵をぶつけるというシーン、わたしは見事だと思いますけど、隠喩としてわかりやすすぎるかもしれない。そこがどう評価されるかですね。でも前があまりにもわかりにくかったから、これくらい懇切丁寧に書いたほうが、現代文学が苦手なシンちゃんやテルちゃん向けとしてはいいのかも。

大森「らん」と「たまご」だけだと狙い過ぎに見えたかもしれないけど、豊胸手術の話から始まるおかげでうまく緩和されている。

豊崎乳に関してもグッジョブです。〈オレオの今はまだましで、最強の時はアメチェ色、知ってる?アメリカンチェリーな〉〈乳首部だけで余裕でペットボトルの口くらい〉という笑える描写で出産後の乳の変化をリアルに描いて、母性幻想という裏テーマにつなげる。一見、自動筆記みたいな語りだけど、実はものすごく考えて書かれた小説なんだなということがわかります。

大森必然性がちゃんとあり、プロットのレベルでもモチーフがつながって自然に流れているので、あざとい感じがしない。

豊崎女性性云々ということでは、初潮を迎える前の女子の不安、自分の体のうざったさみたいなのも、深刻ぶらずに描けてていい。川上節だと生々しくならないのが、わたしには好ましいです。

大森前作と比べると、今回はずっと手綱を絞ったまま抑えて書いていって、最後の乱闘シーンで一気に爆発するという書き方で、緩急をうまく使っている。

豊崎卵のシーンは名場面ですよね。ここの展開、すごくリズミカルで一気呵成に読まされてしまいます。ただ、語り手が〈でも緑子な、ほんまのことなんてな、ないこともあるねんで、何もないこともあるねんで〉と言っちゃうところは筆をすべったかな、とも思いましたけど。

大森全体的に、ちょっと緑子は出しすぎかな。手記も含めて。あんな長く書かないでしょう、普通。文体も地の文と近すぎる。小学6年生の手記なら、やっぱり「魔法のiらんど」のBOOK機能使ってケータイで書いてるとか、そういう切り口がほしかった。

豊崎手記の頭に○がついてるんですけど、これ何? 卵? さっきの「空で歌う」=ロケット不発小説みたいな深読みからすると、卵子?

大森だから知りませんてば!

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