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ROUND 2芥川賞選考会
楊逸『ワンちゃん』
| 楊逸『ワンちゃん』(「文學界」2007.12) 初(単行本) |
当落予想 ◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴 |
作品評価 A〜D |
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|---|---|---|---|---|
| 大森 | 豊崎 | 大森 | 豊崎 | |
| … | … | B- | B | |
豊崎青木さやかに似ている、楊逸さん。来日20年の在日中国人の方です。中国人は世界中にちらばっているので、母語ではない言語で小説を書く人は珍しくないんですよねというわけで、英語で小説を書くイーユン・リー(『千年の祈り』)を読んでしまった身からすると――。
大森その文句は、「夏目漱石読んでしまった身からすると中山智幸読んでも……」っていうようなもんじゃないの。
豊崎いや、母語じゃない言語で書いてるって意味では同一線上で比較していいはずですよ。しかもイーユン・リーは20年もアメリカにはいないんですよ。
大森上を見ればキリがないでしょ。ウラジーミル・ナボコフとか。リービ英雄にだって勝てないよ。
豊崎これが文學界新人賞とるのはかまわないんだけど、なんで鹿島田(真希)さんとか円城(塔)さんを落としてまで、芥川賞候補にいれなきゃいけないのかっていうのが不思議です。日本人とお見合い結婚して来日した「ワンちゃん」が、嫁の来るあてのない日本の田舎の男と中国の娘たちとの見合い斡旋業に奔走する縦糸に、依頼してきた一人の男へのワンちゃんの恋心という横糸を織り込んだ物語です。読んでいて大変感じのいい小説ではあるけれど、読んでの感想がこれといって何もありません。

大森特に珍しいことは書いてないんですよね。日本人が書いても同じような話になりそうで。そういうビジネスに対して僕らが抱いているイメージから、あまりはみ出すものがない。中国人のキャラクターも、中国に行って嫁さんを見つけようとする田舎の男たちのキャラクターも、わりあい類型というか、どこかで見たような感じで、予想の範囲内。
豊崎既視感がある。その既視感ゆえに、文學界新人賞の選考委員が「近代文学だ」と連呼しているんでしょうけど。せっかく青木さやか似なんだから、もっと意地悪な小説書けるといいんですのに(笑)。ワンちゃんの旦那が病院に行った方がいいってくらいの早漏という設定は面白くて、ワンちゃんを全然大事にしてないとか、そういうある種のニッポン男児のだめな感じはよく描写されてますけど。
大森不自然だなと思うのが、その旦那の話がカットバックでどんどん出てくるんだけど、すごい強烈じゃないですか。なぜこんな商売を自由にできて、中国出張にまで行けるようになったのか、そこに至るまでの過程が見えてこない。
豊崎病気の姑もいて、入院したりしてるんだから、この手の不愉快な男だったら「そんな仕事で家を留守にするな」とか言って絶対世話させようとするはずですよね。あー、でも、もしかしたら自分の母親のこともどうでもいいと思ってる男なのかも。
大森ビジネスの収支も気になるところで、ワンちゃんの商売と家庭の関係がよくわからないですね。
