文学賞メッタ斬り!トップ > ROUND1 レース予想 > 直木賞候補作紹介
ROUND 1候補作発表を受けて、大森望&豊崎由美による受賞レース予想!!
直木賞候補作紹介
● 井上荒野『ベーコン』(集英社)
日曜日だけ来る妻子ある恋人。その妻に子どもができた。女は彼女の離婚した母がいつもつくっていたほうとうを男にリクエストされる(「ほうとう」)。父が家族を置いて出て行った日、料理の出来ないはずの彼が大量につくった水餃子(「父の水餃子」)。昔、父とわたしを置いて酪農家の若い男とでていった母。その母が死んで、わたしはその男の家を訪ね続ける。男のつくった自家製ベーコンの味(「ベーコン」)など、食のシーンと男女の微妙な思いを交差させた九つの短編集。


● 黒川博行『悪果』(角川書店)
大阪のマル暴担当の刑事、堀内は、警察情報を業界紙記者に漏らし、疑惑のある企業を恐喝し、巻き上げた金を折半することでシノイでいる。ある日、ネタ元からおおがかりな賭場が開かれる情報を得、相棒の伊達と捜査を開始、ガサ入れに成功する。しかし、その内部情報を業界紙記者にもらしたところ、記者の身に異変が起きる。事件の裏には複雑な事情が潜んでいた……。
● 古処誠二『敵影』(新潮社)
明日は玉音放送でついに日本が降伏するのだという噂がかけめぐる沖縄の捕虜収容所。傷ついて捕虜になった義宗は、介抱してくれた女学生の消息と、女学生の死の原因となったらしい兵士を探していた。敵方の捕虜になり食料をあてがわれ、明確な「敵」という存在を失なった収容所の日本兵のあいだには味方同士の「仇討ち」が横行していた。義宗のさがす兵士の正体は意外なものであった。


● 桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)
結婚式の前日、〈わたし〉=花は私の男を婚約者に会わせる。男は花の養父だ。九歳のとき、震災で家族を失った花は、ずっとこの男に育てられてきた……。花と養父の不思議な関係、情愛の濃さの底にあるものは?
結婚する花の視点、花と出会ったときの婚約者の視点、少女の花と暮らす父親の視点など、異なる六つの時制と視点の組み合わせで語られる章を通して、ふたりの関係、愛憎の本質が明らかになっていく。
● 佐々木譲『警官の血』上 下(新潮社)
戦後の混乱期に警察官となった安城清二。彼は、ふたつの未解決の殺人事件を追う最中に、事故死する。その息子の民雄も警察官の道を選び、潜入捜査官の任務を経て、父と同じ駐在所勤務の警察官となる。彼もまた父の追った未解決の殺人事件を調査するが、その途中で殉死する。民雄の息子の和也も警察官となり「あれが安城の息子」と警察内部でささやかれるなか、やはり、遠い昔のふたつの未解決の殺人事件を調べることに。三代の警察官一家が追った謎の真相が、意外なかたちでついに現れる。


● 馳 星周『約束の地で』(集英社)
事業に失敗し、自殺を決意した堀口だが、決別した父が大金を手にしていることを知り、それを盗み出そうと父の山小屋に侵入する(第一話「ちりちりと」)。その父の愛人と噂された美恵子はアルツハイマーの母の介護に明け暮れている(第二話「みゃあ、みゃあ、みゃあ」)。美恵子を捨てた愛人の息子は、近所の青年に売りつけられたスクーターに乗って、愛犬といっしょに「世界の終わり」を探している(第三話「世界の終わり」)。登場人物を連鎖させて語られる五話からなる連作短編集。
