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ROUND 5 直木賞選考会 後編
松井今朝子『吉原手引草 』
| 松井今朝子『吉原手引草 』(幻冬舎) 3回目 | 当落予想 ◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴 |
作品評価 A〜D |
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|---|---|---|---|---|
| 大森 | 豊崎 | 大森 | 豊崎 | |
| … | ○ | B | A- | |
豊崎今回私がすんごくかわいそうだと思ってるのが、松井さんなんですよ。こういう候補の挙げ方ってのはどうなの? 北村さん以外全員を新人にするわけにもいかないから、松井さんの新刊でも入れとく? みたいな幻聴が私には聞こえるんですけど。
大森3回目の候補だけど、2002年に『非道、行ずべからず』と『似せ者』で続けて候補になったあと、5年くらいほっとかれたんですよね。
豊崎松井さんも資料を読み込む人で、花魁言葉とか吉原言葉とか、当時の資料にあたって一度正しい形を理解した上で、それを現代の読者にもわかりやすい言葉に直すっていう丁寧な仕事をしてるわけです。その大変さっていうのは私たち読者より書き手の方が理解できるはずなんですから、救いがあるとしたら平岩さんのような時代小説の書き手がどれくらい評価してくれるかだと思うんですけど。
大森時代物に詳しい人には、吉原に関する説明がちょっとくどく見えると思う。最近iPodで落語ばっかり聞いてるせいか、これ読んでると、「明烏」とか「紺屋高尾」とか「三枚起請」とかの廓噺が耳に聞こえてきて、すごく楽しいんだけど、そういうののつぎはぎっぽく見える部分もある。

豊崎あとミステリとしての要素も備えてますよね。まあ、トリックがわかりやすいっていうのが難かもしれませんけど。
大森んー、トリックになってないでしょう。
豊崎ありますっ。足抜け不可能な吉原からカリスマ花魁が忽然と姿を消すっていう人間消失トリックが一応ありますっ。ただ……それが途中でわかっちゃうんですよねえ。だからミステリーの要素では読者を最後まではひっぱっていけない。じゃあ、何でひっぱっているかというと“語り”なんですよ。その魅力をどこまで評価してもらえるか、評価されたらもしかしてと思って、私は対抗をつけたんですけども。
大森平岩さんも、宇江佐真理さんにはめちゃくちゃ厳しかったけど、松井さんの作品は選評でそんな悪く言ってないですよね。
豊崎そこそこの評価は集めると思うんです。16人の登場人物の語り口をうまくさばけましたね、とか。でもこれで受賞は難しい。獲れないでしょう。個人的には残念ですけど。