文学賞メッタ斬り!

文学賞メッタ斬り!トップ > ROUND2 芥川賞選考会 後編 > 諏訪哲史『アサッテの人』

ROUND 2芥川賞選考会 後編

諏訪哲史『アサッテの人』

諏訪哲史『アサッテの人』(「群像」2007.6) 当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
A- B

あらすじはコチラ

豊崎どちらも新人賞受賞作ですが、群像新人賞受賞作「アサッテの人」は「オブ・ザ・ベースボール」と対照的。かなりあからさまに自己言及的な内容に徹してるので、わたしは読んでてちょっとはずかしくなっちゃったんです。わざとなのはわかるんだけど、ちょっと不器用に過ぎるというか。大森さんはA-付けてますね。

大森こういう努力は評価してあげないと。書き出しの文章はすばらしい。トカトントンみたいなリズム感。それがだんだんふつうになっていくところが弱点で、傑作になり損ねた。“ポンパ”とか“タポンテュー”といった叔父さんの口癖に対する考察からどんどん仮説がひろがっていくところは、それこそダニエレブスキーの『紙葉の家』みたいになるのかとわくわくしたのに……。

豊崎なりませんっ! ダニエレブスキーとくらべてもしょうがないけど、作者の手筋が見えちゃうっていうか、驚きがないんですよ。そこが物足りない。好きな系統の作品ではあるんですけど。まあ、でも新人なので、これからを楽しみにしたいですね、わたしは。

大森この密度でこれだけ書く力は相当ですよ。

豊崎《ポンパ》の[発音および使用例]とかあんまり笑えなくて。この程度のわけのわからなさなのかあと思っちゃった。“ポンパるんならポンパるよ。おまえがどうしてもポンパりたいんならポンパれよ”とか。川上未映子さんのあとで読んじゃったからかもしれないけど。あ、ここは笑った。ギルバート・オサリバンの《アローン・アゲイン》を、耳で聞こえたままの発音を書き写してるとこ。これってみんなやるでしょ、中学の時とかに。

大森そうそう。

豊崎“えなりるわっほなう”って思わず歌ってみて、あ、ほんとだーって(笑)。まあ、ていねいに読みたくなる作品ではありますね。

大森業界での評判は非常にいいし、これが受賞してもそんなに不思議はないと思う。

豊崎そうですかあ?

大森とんでもないところまで暴走するかと思って読んでると、まあ、最後はふつうにいい話になって終わるし。

豊崎わたしは怒ると思うな、シンちゃんテルちゃんコンビが。

大森そりゃね、本命は「受賞作なし」ですよ。ただ、そろそろ揺り戻しもあるかもしれないから。今までのどうでもいい作品に授賞する傾向が続くんなら「アウラ アウラ」、さすがに揺り戻しがあるとすると「アサッテの人」もあるかも。

ページのトップへ