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ROUND 2芥川賞選考会 前編

川上未映子『わたくし率 イン 歯ー、または世界』

川上未映子『わたくし率 イン 歯ー、または世界』
(「早稲田文學」0)
当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
B- A

あらすじはコチラ

大森掲載誌は、リニューアル創刊を予定している新生「早稲田文學」の0号。主要文芸誌5誌(文學界、群像、新潮、すばる、文藝)以外から候補作が出るのは、「樹林」406号初出の玄月「おっぱい」(121回)以来、なんと9年ぶりの快挙です。著者の川上未映子さんは、「未映子」の名前でアルバムを出しているシンガー・ソングライターで、“文筆歌手”を名乗ってます。去年出したエッセイ集が若島正に絶賛されたり、「早稲田文學」のフリーペーパー「WB」7号で表紙を飾ったりしてて、今回の芥川賞候補では、まちがいなく注目度ナンバーワンの大型新人なんですが……評価わかれましたね、まあ、A付けるひともいるか。

豊崎うん、D付けるひともいると思う。ダメなひとは全くダメでしょう。かなり好みで評価がわかれるタイプ。笙野頼子とか町田康に通ずる、思わず音読したくなるような語り口が、わたしには快感でした。

大森それはわかるけど、長すぎて途中ちょっと疲れた。「WB」7号の超短編「感じる専門家 採用試験」とか、エッセイ集の『そら頭はでかいです、世界がすこんと入ります』のほうが冴えてたような気がして。この文体でこの長さを書けたというだけでもすごいっちゃすごいけど、途中ちょっと文学的になるじゃないですか。あのへんで息が続かなくなる。最後まで行くとまた盛り上がるんだけど。

豊崎そうそう、主人公の女性が最後に壊れきっちゃうでしょ、それまで恋人のように語られてきた青木って男の家に行って、実はすべてが妄想だったってことが明らかになる。そこからの怒濤の語りにたいして放たれる、青木の現実の恋人である女のきつーい罵声。

大森あそこは傑作。

豊崎“だから青木くん、わたしにゆうてくれたんやろ、私に教えてくれたんやろ、なあ、一緒に考えようやあ、そうや、猫はひげやねんて、猫はひげを私と決めたんやってなあ、猫のわたくし率はひげにとっきんとっきんにみなぎっておる!”とかくどくどうるさくてわけわからんことばかりぬかす主人公に、“わたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしわたしうるさいんじゃぼけなすが。おまえ何千回わたしわたしわたしゆうとんねんこら。いっかいゆうたらわかるんじゃ。わたし病かこら”(笑)。この瞬発力は買いでしょー。

大森かなり笑えました。この調子でアクションも書けると相当おもしろい。

豊崎なるほど、そうですね、語りだけじゃなくて。それができてこその町田康レベルなわけですからね。だから、川上さんのこの作品を読むと、町田康の凄みってものも逆にわかると。でもね、この人はこれからぐんぐん面白くなっていきますよ、きっと。わたしの好きな系統の小説ですから、個人的にはがんばってほしい。期待してます。

大森ともあれ、このタイトルが芥川賞候補になっただけで快挙ですよ。宮本輝先生が選評でなんとおっしゃるかが楽しみです。

豊崎あのひと、タイトルにうるさいですからねー。怒っちゃいそうだなあ。“わたくし率 イン 歯ー”てどういうことやねん!

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