文学賞メッタ斬り!

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ROUND 2芥川賞選考会 前編

第137回芥川賞候補作 当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
松井雪子『アウラ アウラ』(「文學界」2007.3) C B-
前田司郎『グレート生活アドベンチャー』(「新潮」2007.5) B- C
川上未映子『わたくし率 イン 歯ー、または世界』(「早稲田文學」0) B- A
円城塔『オブ・ザ・ベースボール』(「文學界」2007.6) B B+
柴崎友香『主題歌』(「群像」2007.6) B B-
諏訪哲史『アサッテの人』(「群像」2007.6) A- B

選考委員/池澤夏樹・石原慎太郎・黒井千次・高樹のぶ子・宮本輝・村上龍・山田詠美・小川洋子・川上弘美
*大森、豊崎ともに、◎予想は受賞作なし

前田司郎『グレート生活アドベンチャー』

前田司郎『グレート生活アドベンチャー』 (「新潮」2007.5) 当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
B- C

あらすじはコチラ

豊崎ぬるい! 幼稚!

大森それはしょうがないじゃない。“僕は〜と考えた”“オシッコをして、続きを読もう”とかすごい幼稚な思考やぬるい行動を繰り返すのがこの小説のポイントでしょ。そこを否定するのはかわいそう。

豊崎これ読む前に、チェルフィッチュ主宰の岡田利規くんの『わたしたちに許された特別な時間の終わり』っていう中編がふたつおさまった本を読んでて。その後半に入ってる「わたしの場所の複数」っていうのが傑作なんですよ。「グレート生活アドベンチャー」と同じようなにっちもさっちもいかない格差社会の底辺を、夫婦そろってアルバイターの妻視点で描いてるんだけど、ぜんぜんこっちのほうが上。
前田司郎さんは五反田団の主宰で、同じ演劇人だから、つい比べて点が辛くなってしまいました。

大森小説のタイプが違うと思うけど、まあしかし、ブログとかメールがモチーフになってる分、「わたしの場所の複数」のほうが今風。「グレート生活アドベンチャー」の弱点は、出てくるモチーフが古めかしいこと。ニートの主人公は一日中RPGやってるんだけど、それがどう見ても「ドラクエ」か「FF」。小説で言うと『ノーライフキング』(いとうせいこう)か『山田さん日記』(竹野雅人)かという感じで、いきなり80年代ぽいんですよ。今だったらMMORPGでしょ、主人公はネットカフェ難民とかで。あと、あと途中に出てくるマンガが……。

豊崎はいはい。猫屋まじゅ先生の「墮天使の吐息II」ですね。

大森このタイトルでBLじゃないというのは決定的に間違ってる(笑)。だからわりと懐かしい感じになっちゃうんですよ。いまどきこれはないだろうと。にもかかわらず、最後のラスボス戦が実によくて――

豊崎うん、あれはよかった。2Gで買った木の棒で殴る。

大森不覚にも感動しました(笑)。あのシーンがすばらしかったので、けっこういい小説だなあと。

豊崎わたしも、あれがなかったらDだった。このばかばかしさは美点ですね。でも、こういう面白さも、結局はシンちゃん(石原慎太郎)やテルちゃん(宮本輝)には伝わらないから。そういう意味では中途半端なんですよ。

大森前田司郎は、去年の三島賞候補になった『恋愛の解体と北区の滅亡』もそうだけど、ちょっと古い感じ、うらぶれた感じのダメっぽさを描くのがすごくうまい。愛嬌がある。

豊崎若いのにまるで40代みたいな印象を受けますよね、わたしたちと同世代みたいな。

大森そうそう。不思議ですね。

豊崎たぶん今の若い子が読んでも「なんだ、これ?」っていう感じなんだろうと思う。まあなんにしても受賞はぜったいない。まず無理。

大森そろそろ演劇系から受賞者が出そうな雰囲気ですけどね。本谷有希子もいるし。

豊崎だったら、岡田利規くんにぜひ!

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