文学賞メッタ斬り!

文学賞メッタ斬り!トップ > AFTER ROUND 第137回芥川賞直木賞受賞作発表を聞いて

AFTER ROUND 第137回芥川賞直木賞受賞作発表を聞いて

7月17日の夜、東京・築地の「新喜楽」で選考会が開かれ、第137回芥川賞直木賞が決まった。
発表を受けて、大森望、豊崎由美のメッタ斬りコンビから緊急コメントが届きましたのでご紹介。

第137回芥川賞  諏訪哲史『アサッテの人』 当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
A- B

受賞予想対談はこちら

第137回直木賞 松井今朝子『吉原手引草 』 当落予想
◎=本命 ○=対抗 ▲=大穴
作品評価
A〜D
大森 豊崎 大森 豊崎
B A-

受賞予想対談はこちら

大森望のコメント

芥川賞→直木賞の順で待機会をハシゴして、新顔の候補者が初めての落選通知を受ける現場を立て続けに目撃したわけですが、それよりなにより、直木賞 の結果を聞いた瞬間、全身の力がいっぺんに抜けて、へなへなとその場に崩れ落ちそうになった。直木賞予想が公営ギャンブルじゃなくてほんとによかった と思うのはこういうときですね。まさに驚天動地、あんびりーばぼーな結果と 言わざるを得ない。

作品として『吉原手引草』に不満があるわけじゃないけど、しかしそもそも 「直木賞は作品じゃなくて人に与える文学賞」ってことじゃなかったの? いや、だからといって松井今朝子の受賞に不満があるわけでもなく、言いたいことはただひとつ。『玻璃の天』を落とす理由がさっぱりわかりません。こうなったら北村さんには柴錬賞と直木賞のダブル受賞で華々しく還暦を祝ってほしい。

芥川賞のほうは、下馬評どおりの順当な結果。もっともここしばらく「順当な結果」に落ち着くことが珍しかったので、その意味では意外な結果かも。このところリアリズム系の読みやすい作品が続いたので、新しい選考委員も入ったところで、ちょっと反対の方向に振ってみました、というところですか。

しかし直木賞がなあ……。
もう疲れたよ……。
旅に出ます。探さないでください。

豊崎由美のコメント

へえぇ〜、やるじゃん。シニフィエ/シニフィアンをめぐる小説に授賞するとはねえ。石原慎太郎という名のバカの壁を、若手選考委員はどのように乗り越えたんでありましょうか。まさにベルリンの壁崩壊と同じくらい衝撃的な平成下克上事件と申せましょう。
「受賞者なし」という予想はハズレましたけど、受賞作はあったほうがいいに決まってます。なので意外ではありますが、まずまず満足な結果。選評が楽しみだなあ。バカの壁がどういう過程を経て崩壊に至ったのか、川上未映子作品をシンちゃんとテルちゃんがどう読んだのか、文学賞雀にとっては興味津々。で、この感想記における予想自体がハズレてて、もしもシンちゃんが最初から「アサッテの人」を推していたとしたら……。とりあえず、都庁方面に頭を垂れて謝罪する用意くらいはあるオデなんですけども。

我が心の第137回直木賞作品は、候補にすら挙げてもらえませんでしたけど佐藤亜紀の傑作『ミノタウロス』(講談社)だったんですの。なので、何に決まっても淡々としている自信がありましたの。ところが……。

ま、まままままま松井今朝子!? いやいやいやいやいやいやいや、これは驚天動地でございます。いや、いやいやいやいや、たしかにわたしの評価自体は高うございましたですよ。予想で対抗の印もつけました。しかし、まさか獲れるとはまったく微塵も考えておりませんでしたの。しかも、単独受賞とは……………あれ、北村さんはいずこへ?

これは、文藝春秋の下読み社員にとっちゃ「いててててて」ってとこでしょうねえ。結果的にものすごく失礼なことになっちゃったわけですから。結果が出るのにこれほど時間がかかったのも、北村さんへの配慮なんじゃないかなあ。松井さん単独にするか、2作受賞にするか、それで選考に時間がかかったと思いたい人情派刑事のあたくしなんですの。
個人的には松井さんの受賞を言祝ぎたい気持ちでいっぱいです。でも、北村さんの心中を思うと“目出度さも中くらいなり”。北村さん、直木賞卒業宣言なさっては?

しかし、両賞とも他社作品に授賞したからって、これで禊ぎが終わったと思うなよ>文藝春秋。

ページのトップへ